現場の男性社員たちは、私を「仲間」として認めてくれました。
「それが何より嬉しいです」
解体事業部に所属する女性社員、矢澤麻依さんは、目を輝かせて言った。
世田谷区の田園調布エリアと呼ばれる閑静な住宅街。近隣には学校も多く、子どもたちの笑いさざめく声が町中に優しく響く。そんな街の一角に、矢澤さんの務める東輝建設本社がある。1階のガレージにはハーレー・ダビッドソンなどの大型バイクが何台も置いてあり、一見して建設会社らしくない雰囲気だ。この会社に勤める約80人のうち、女性は6人。中でも矢澤さんは、唯一の「現場にも出る女性社員」だ。
「私は解体事業部で、図面や書類の作成をメインで担当しているのですが、パソコンで図面を描いていても、現場を見ないとわからないことが多い。だから実際に現場を見て、状況を知ることがとても重要なんです。現場に通っていたときは内装解体の手伝いもしたのですが、次の日は筋肉痛で大変でした! でも徐々に体は慣れるし、男性スタッフや他社の人とも良いコミュニケーションが取れるようになり、得るものがたくさんありました。」

パソコンインストラクターから建設会社へ
矢澤さんと東輝建設の出会いは、ちょっとユニークだ。パソコンスクールでインストラクターとして働く矢澤さんのもとに、東輝建設の社長である土渕優二氏が生徒として通いはじめた。やがて転職活動を始めた矢澤さんに、土渕氏が声をかけた。
「CADのオペレーターとして入社したので、事務作業が中心なんだろうと考えていました。でも作業を進めると、データだけではわからないことも多いし、専門用語も難しい。実際に現場に行って、そのものに触れる経験ができることに、とても感謝しています。」
しかし、20人の作業員がいる現場に女性は矢澤さん一人。不安はなかったのだろうか。
「行く前は『一人ぼっちでご飯を食べるんだろうな』とか考えていたんですけど、実際は男性の方が気を使ってくれたし、『どうせ女性だからできないだろう』などと軽く見ずに、とても尊重してくれました。わからないことは丁寧に教えてくださって、それまで持っていた『現場の人ってちょっと怖い』という印象が一変しましたよ(笑)。」
もちろん、現場に出ても男性と同じ力仕事ができるわけではない。
「たとえばちょっとした掃除や片付けだったり、足りないものを買ってきたり。お菓子と飲み物を用意しておくだけで、働く人達の気分が変わる。男性だけでは気づかないような女性ならではの気配りも、現場には必要なんだと思います。」
ただ現場での仕事は、女性ならではの悩みも多い。
「女性用のトイレや更衣室は無いですね。だからコンビニのトイレを利用したり、作業着のまま駅まで行ったり、ということはありました。」
しかし現場で働く女性が増えたら、その状況も変わるだろう。土渕社長は、状況に合わせて女性用トイレ設置などの働きかけをしていくつもりだという。

経験とスキルを活かし、オリジナル作業着をデザイン
実は、矢澤さんをはじめ社員が身につけている作業着やヘルメットは、彼女がデザインした東輝建設オリジナルのもの。
「学生時代は、専門学校でデザインを学んでいたんです。入社してすぐに、社長から作業着のデザインを依頼されて、半年かけて作りました。」
土渕社長の頭のなかにある構想を矢澤さんに伝え、それを徐々に形にして、試作を繰り返し完成した。夏の空のように鮮やかなブルーは、航空自衛隊『ブルーインパルス』をイメージしたという。
「一番苦労したのは、ジッパーの色ですね。オリジナルカラーで染めています。そのほか、名前の刺繍やエンブレム、袖の折り返しの色、ステッチの糸の色、ベルトループの刺繍まで、細かなところまでこだわりました。作業着だけでなく、下に着るシャツは半袖、長袖など5種類あり、パンツの太さも現場用と事務作業用では変えてあります。」
完成した作業着を着た社員たちの姿を会社のブログにアップしたところ、矢澤さんの家族は驚いて、そして喜んだという。
「こんなことまでさせてもらって、すごいね、って。やりたかったデザインの仕事を、このような形で実現することができて、本当に嬉しい。自分がやりたいこと、得意なことをアピールすると、社長や社員のみなさんがそれを活かそうとしてくれる。そんな姿勢が、この会社にはあります。」
また、元パソコンインストラクターのスキルを活かして、毎週金曜日には「社内パソコン教室」が開かれている。
「今は、建設現場でもエクセルを使った作業が求められますが、あまり馴染みのない職人さんも多い。インストラクターの仕事も大好きだったので、みなさんの役に立ててよかったです。」

仕事も、遊びも、全力で!
自分の得意分野を活かし、伸び伸びと働く矢澤さん。毎日楽しく仕事ができるのは、東輝建設の社風に理由があるのかもしれない。
土渕社長を始めとする東輝建設社員のポリシーは「仕事も遊びも全力で!」。本社1階の打ち合わせスペースには、大型テレビや生ビールサーバー、ダーツが置いてあり、仕事終わりの社員が自由に使えるという。また、本社の屋上で多摩川の花火大会を見ながらバーベキューをしたり、春はラフティングやツーリング、冬はスノーボードなど、集まって楽しむことが多い。
「私はもともとインドアな性格なので、アウトドアで楽しむことが少なかったんです。でもここの人たちは、アウトドアの楽しみ方を知っているから、この流れに乗らないと、損!」
矢澤さんは、入社以来様々なアウトドアイベントを経験したそうだ。
「バーベキューさえもあまりしたことがなかったけれど、やってみるとすごく楽しい! この会社に入らなかったら、ジェットスキーに乗る経験なんて、できませんでした。」
仕事のあとは1階のスペースで生ビールを飲んで、女性社員とおしゃべりすることも。
「土渕社長は、『人の縁』を大事にしてくれます。こうして仲間の一人になれたことが、本当に嬉しいです。」

結婚・出産しても、ずっと働き続けられる会社
矢澤さんのこれからの夢は、解体事業部にとって不可欠な人材になること。
「今はまだ知識も経験も足りませんが、これからもっと勉強して、様々な現場を見て、身につけていきたい。いずれは『矢澤に任せたら大丈夫!』と言ってもらえるような存在になりたいですね。」
そしてもう一つの夢は「重機に詳しいお母さんになること」だという。
「今後、結婚して子どもが生まれたとき『この重機は、お母さんの会社にもあるんだよ』なんて話してあげられたらいいなあ。もちろん、結婚・出産しても仕事は続けたいと考えています。会社には育児休暇制度などもありますが、現状では利用した社員はまだいません。これから若い女性社員が増えてきたら、その実情に即して新たな仕組みや体制ができていくと思います。」
今後小さい子どもを持つ女性が入社したら、保育費用の一部負担など検討している、と土渕社長。
「社員それぞれのできること、得意なことを認めて、それを活かしてくれる。出産や育児など、社員の事情にも柔軟に対応してくれる。『大勢いる社員の一人』ではなく、一人ひとりと向き合ってくれる。東輝建設は、そんな会社です。自分のやりたいことを諦めたくない、色々なことを経験してみたい。そんな思いを持つ女性社員をお待ちしています。一緒にガールズトークしましょう!」
東輝建設の“イズム”は「Endless Possibilities ―無限の可能性―」。 矢澤さんのように、様々な可能性を持った女性たちこそが、これからの建設業界を支える大きな存在となっていくのだろう。


やざわまい
矢澤麻依
株式会社東輝建設 2015年6月入社
矢澤麻依さんが働く株式会社東輝建設ではこんな方を求人しています
②新築現場のコンクリート打設および軽作業
現場の意見をもっと聞きたいので気兼ねなく教えて下さい。